『ドリフェス!』が「アイドル」を教えてくれた

 

アニメ『ドリフェス!』を一夜で見てしまった。しかも泣きながら。嗚咽まで漏らして。アイドルって実は単純で、でも複雑で、それでいてこんなにもアツい。アイドルを見るのって応援するのってこんなに楽しいんだ、ただ純粋にアイドルを応援する楽しさを思い出させてくれた。

 

www.dream-fes.com

 


ドリフェス! 第1話 絆を奏でるニューフェイス!


 

作品解説
ある日突然、レジェンドアイドル三神遙人によってスカウトされた高校2年の主人公・天宮奏。同じ事務所のアイドルたちの熱い想いを目の当たりにし、負けじとアイドル活動に夢中になっていく。そして、元子役でミステリアスな及川慎、誰よりもストイックな佐々木純哉、優しくも内に情熱を秘めた片桐いつき、天然で天才肌の沢村千弦と共に、「ドリフェス!」に出場し、CDデビューを勝ち取ることを目指す!ファンが応援(エール)を込めて贈る「ドリフェス!カード=ドリカ」を受け止め、奏たちは最高を越えるステージを届けることができるのか……!?応援(エール)はドリカが示すもの!!
目指すは、デビューをかけた夢のステージ「ドリフェス!

 

  私はこんなアイドルアニメを待ってたんだ、1話を見てそう感じた。超王道で、臭いくらいの青春で、キラキラまぶしくて。「アツくなれるものがなかった主人公が何かに巻き込まれて、その素晴らしさに気付き、トップを目指す」というストーリーは定型で何度も見た展開だけれど、何度見ても飽きないし何度見ても感動するものだ。だからこそ王道なのであって。それが『ドリフェス!』には確かにあった。

 

アニメ『ドリフェス!』は天宮奏、及川慎、佐々木純哉、片桐いつき、沢村千弦の5人がDearDreamを結成しデビューするまでのお話。ここ数年アイドルアニメと呼ばれる作品を何本か見ていたが、意外にもグループ結成の過程を描いているものは少ない。2次元アイドルに求めるものは千差万別だから一概には言えないが、私にとってはこのストーリーが見事に刺さった。

ただのアイドル予備生で顔見知り程度でしかもライバルでもあった関係性が、どう変化してどうDearDreamになるのか。これがアニメを見ていてストンと腑に落ちたのである。ああ、この5人はなるべくしてDearDreamになったんだ、と。

アイドルのメンバー同士って何とも形容しがたい仲だと私は思っている。関係性も感情もめまぐるしく変化すると私の好きだったアイドルは言っていた。最初の印象の良し悪しもあるし、練習生期間の長さで先輩後輩関係があったかと思えば、デビューを争うライバルでもある。それでいて自分にないものをもつ相手を尊敬したり、補いあったり。そんな複雑な関係性の下で生まれたアイドルの絆ってやっぱり見ていて、眩しい。

それが『ドリフェス!』内で丁寧に描かれている。主人公の奏くんが周りの4人へ影響を与えていくから、奏くんと4人の関係性はもちろん、奏くんが事務所に所属する前の4人の微妙な距離感も見ていて伝わるところに脚本家の力量を感じざるを得ない。このあとの絶妙な関係性の変化はデビュー後という設定では絶対に描けない。

 

特に面白いのは、他の4人と初対面だった奏くんの他のメンバーへの呼び方の変化。すごくさりげなく変わっているのだ。ここらへんが凄くリアル。大概アニメって登場人物多いと視聴者が混乱してしまうから呼称は一貫しているが、『ドリフェス!』登場人物が最低限の人数に収められているからだと思う。

 

2次元アイドル界隈を見ていて思うのは一コンテンツに対してメンバー及びユニットの数が多いということだ。多数の好みの領域をカバーするために必要な数なのだと想像できるが、メリットもあればデメリットもある。アニメ化の際に一人一人、一グループずつを掘り下げられない、という点だ。アニメは一クール12話と決して多くなく、一人の主人公の成長物語として多いか少ないかというレベル。実際大所帯コンテンツのアニメ化作品を見ると個人もグループも掘り下げきれず中途半端に終わってしまっているという印象を受けた。

ドリフェス!』にもKUROFUNEという2人組のライバルグループが登場するのだが、DearDreamとの絡め方もまあ上手い。こればっかりは見て下さいとしか言えない…。

 

ドリフェス!』のアプリゲームも始めた。キャッチコピーがまた面白い。 "アイドル応援型ライブリズムゲーム"。 一見普通なんだが、これがすべてを表現している。文字通り"アイドル応援型ライブリズムゲーム" なのである。チュートリアルで名前を徳川慶喜(最近のゲームでは大概この名前に設定している)にしたあと、一向に「慶喜ちゃん♡」「慶喜さん!」とは呼ばれない。どういうことかというと、プレイヤーはあくまで "ファン" だから。『ドリフェス!』というコンテンツでは "アイドル" と "ファン" の関係はそれ以上でもそれ以下でもない。

昨今のアイドルコンテンツではプロデューサーやマネージャーというポジションに置かれがちな私たちだが、『ドリフェス!』では一貫して「ファン」という立場に置かれる。これが私には最大のヒットだった。どうして、ただアイドルを応援したいだけなのに、恋愛要素を醸し出されなきゃいけないのか…?自分とアイドルの接触を見ないようにして他のアイドルアプリゲームをプレイしていた。『ドリフェス!』では他で言うメインストーリーも番組形式でプレイヤーは一視聴者という立場だ。

アニメ化した際にも様々な問題が生じるように思う。プロデューサーがアニメ内で描かれると自動的に登場人物が1人増えることとなり単純に考えるとアイドルの魅力を伝えられる時間が減少する。プロデューサーの役回りや成長を描かなくてはいけないからだ。『ドリフェス!』ではそれがない。デビュー前だからとも言えるが、売り込みや宣伝も一からメンバーみんなで考えて実行する。これは意外と盲点で、アイドルの一面を一分一秒でも多く魅せられる上にユニットの仲を深めるのにも一役買っているだろう。

 

2次元アイドルでもう一つ課題となるのは、2次元でやる必然性である。

3次元アイドルと同じことをやっていては、生身で、リアルタイムで生きている3次元にどうしたって劣ってしまう*1

2次元アイドルでしかできない魅力が不可欠であるとわたしは思う。

 

ドリフェス!においてのそれは、ファンとの関係性の「可視化」、である。

アニメ内でのファンへの描写もファンをドキッとさせる。ファンは「ドリカ」を使ってアイドルにエールを送る。

 

www.youtube.com

 

この応援という行為が目視できる「ドリカ」を使ったエールが粋。私たちファンは応援をするという行為を形で示すのは難しい。しかしそれがこのエールによってアイドルたちがライブしてるという直接性が感じられる世界線は羨ましくもあり。

私が一番グッと来たのは最初のステージに立った奏くんが初めてドリカを受け止めるシーン。ファンのエールが強くて奏くんは受け止めきれず「エール、重っ!」と漏らす。掴み切れず逃したドリカを追いかけ捕まえて、初めて受け止めたとき、そのドリカを見つめて「ありがとう!」と最高の笑顔で感謝を伝えてくれる。このシーンを見て、私がドリカを送ったわけでもないのに心がじわっとあったかくなった。アイドルを応援するときの気持ちってこんな気持ちだった、そう思った。

 

 それが1話の出来事なのだが、その後もファンを大切にしてくれる描写が散りばめられている。ファンを大切にするというか、何だろう、ファンじゃなくても大切にしてくれるというか。言葉にするのが難しいけれど、それがアイドルなんだよな、と思い直した。ファンだけじゃなくてアイドルに会った、声を聴いた、いやお茶の間で見ただけの人たちまで、「アイドル」という存在に触れた人すべてを幸せに、ほっこりした気持ちにさせてくれるのが「アイドル」なんだ。

DearDreamは最高を超えるアイドルになるってキャッチコピーとかじゃなくて本当に思った。

 

知り合いのアイドルオタクたちとも口を揃えて言うのだが、長年アイドルオタクやってると説教臭くなるし素直に受け入れられなくなることがよくある。推しへの気持ちが強くなりすぎるがゆえに目を背けたり見ないふりをすることもある。コンサートは全通するとかCDは全形態買うんだという自分のルールに縛られることもある。

そんな気持ちを忘れて、純粋で、キラキラした目でアイドルを応援していたときの気持ちを『ドリフェス!』を見て思い出した。

 

奏くん、慎くん、純哉くん、いつきくん、千弦くん、ありがとう。

影ながら応援させてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:2次元のキャラクターは生きていないという話ではなくて、コンセプトという点において。奏くんたちが生きているのは大前提です